神戸地方裁判所 昭和33年(ワ)540号 判決 1958年9月11日
神戸市長田区東丸山町七番地
原告
峰谷ヒサヱ
右訴訟代理人弁護士
福本貞義
同市長田区大道通一丁目三十七番地
被告
長田税務署
右法律上代理人署長
羽賀出徳蔵
右指定代理人
平田浩
同
松谷実
右当事者間の贈与契約不存在確認請求事件につき、当裁判所は、次のとおり判決する。
主文
本件訴を却下する。
訴訟費用は原告の負担とする。
事実
原告訴訟代理人は、被告は神戸市長田区東丸山町七番地家屋番号二三番の二木造亜鉛鋼板葺二階建居宅十九坪八合八勺二階坪六坪四合につき贈与者を訴外中浜半次郎、受贈者を原告とする贈与契約の不存在を確認せよ、訴訟費用は被告の負担とする。との判決を求め、その請求の原因として、原告と訴外中浜半次郎とは内縁関係の夫婦であるが、右両名は昭和三十一年中に建築資金を双方出捐して請求の趣旨記載の家屋を建築し、共同所有するに至つたので、いづれ右両者を共有者とする所有権保存登記をしようと思つていたところ、被告は原告が右訴外人の贈与による右建物の所有権を取得したものと誤認して、昭和三十二年中に原告に対し贈与税金四万七千六百五十円を課税する旨の処分をした上、爾来これが支払を督促している。しかしながら原告は前述の如く贈与を受けたものでないから、これが確認を求めるため本訴に及ぶと述べた。
被告指定代理人は、主文と同旨の判決を求め、答弁として、本件訴は、贈与契約自体の無効確認を求めるものであるところ、贈与契約自体の有効無効については確認の利益がないから、本件訴は不適法として却下さるべきである。
また本件訴は、単なる民事訴訟であるのみならず、原告と訴外中浜半次郎間の贈与契約の不存在確認を第三者である被告に対して求めるものであつて、被告は、このような訴について当事者適格を持たないから、本訴は、この点においても、不適法として却下を免れないと述べた。
理由
原告の本訴請求は、国の機関である被告税務署に対し、原告と訴外中浜半次郎間の贈与契約の不存在確認を求めるものであるが、国の機関は実体法上権利能力を有せず、行政事件以外は当事者能力を有しないと解すべきであつて、しかも、本件訴訟が行政事件訴訟でないこと明らかであるから、当事者能力を有しない被告を相手方とする本訴請求は不適法として却下を免れない。
よつて訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 森本正 裁判官 栄枝清一郎 裁判官 丹野益男)